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「アカデミアへの進路の固定はどうしてなのか」
アカデミックなところにいる人や、将来的に進もうとしている人に是非読んで欲しい文章。
文章のハイライト:
『企業=世俗の図式は真に恐ろしいと思える。いつの間にこんなことになってしまったのだろうか。そもそも大学に入った時はこのような思いはほとんど持ち合わせていなかったのに。環境による思考の形成は本当に恐ろしいものである。』
著者によるまとめ:
『アカデミアの世界の体系に深く影響されて、優劣の価値観が単一化した印象が強い。科学と世俗、勝ち組と負け組という二極化のイメージもいつの間にか確固たる物として形成された。また、他者比較、自己顕示欲などにより、嫉妬心と焦燥感も視野を狭める原因となった。また他者からのアドバイスも研究の問題解決に限られ、多様なキャリアパスを考慮する機会は学部から博士までほとんどなかった。』
感想:
(自分の研究室だけでなく、他の研究室や他の分野の研究室の人達の発言を鑑みた上で)
これはホラー。アカデミックな集団は、やはり基本的に単一な価値観を共有している。このことは、僕がアカデミックな場から退くことになった原因の一つであるから著者の意見には非常な共感を覚える。
そして、単一な価値観の集団に長くいると、人間はたやすく洗脳されてしまう。これは恐ろしいこと。洗脳作用に対向するには、自ら強い意志を持って生きるか、積極的に集団外の人たちと接することが重要。
あなたやあなたの研究室の人達は、企業へ就職することを「ドロップアウトすること」や「夢をあきらめ妥協すること」ととらえていませんか?
あなたやあなたの研究室の人達は、世間で有名になることや、お金儲け、あるいは企業活動を世俗的なこととして嫌悪していませんか?
あなたやあなたの研究室の人達は、就職を薦めることを「アカデミアで生きていけないような能力だと馬鹿にすること」として捉えていませんか?
あなたの研究室では、非アカデミックプランを考えていることを言い辛い環境ではありませんか?
あなたやあなたの研究室の人達は「優秀な人間が博士過程・アカデミックキャリアに進むのだ」と思っていませんか?
もしそうだとしたら、あなたやあなたの研究室の人達は、アカデミックの単一価値観に洗脳されているかもしれません。
アカデミアの価値観を持つのもいいでしょう。
しかし、それは絶対的な価値観ではありません。多様な価値観のうちの一つの特殊な価値観に過ぎません。
注意:
僕は決して自分の研究室や分野を非難しようとしているわけではありません。実に自由で愛すべき研究室であると思います。
さらにアカデミックな価値観そのものも非難しているわけではありません。
自らの意志でこのような価値観を築いたのなら、それは素晴らしいことです。
しかし、アカデミックな場にこのような価値観を単一化させる作用があり、それはアカデミック以外のキャリアパスを阻害しているのではないかと思い、この文章を書きました。