新しい常微分方程式の解法について

次のような演算子Tを考えるT(Σa_n/n! x^n) =Σa_n x^n

すると微分演算子Dに対しT(Df)=1/x Tf- a_0/xがなりたつ。
なぜならば、
T(d/dx(Σa_n/n! x^n)) =T(Σa_n/(n-1)! x^(n-1))
=T(Σa_(n+1)/n! x^n))=Σa_(n+1) x^n=1/x(Σa_n x^n)
(表記の簡便のため発散項は無視した)

この演算子Tを用いると、

e^xが微分しても変わらない、
すなわちd/dx e^x =e^x なのは、
1/(1-x)に1/xをかけた1/(x(1-x))に対し、
x=0での発散項1/xを引いたものが再び1/(1-x)である:
1/(x(1-x))-1/x=1/(1-x)
ことと関係していることがわかる。

具体的に記すと
f=e^xのとき、Tf=1/(1-x),
T(Df)=1/x*1/(1-x) -1/x =1/(1-x)=f
よってDf=f

このTを用いて常微分方程式が代数的に解けることがある。

例題1:
f"=-fを解け。

解:
Tを両辺からかけ、
1/x^2 Tf-a/x-b/x^2=-Tf (a/x,b/x^2は両辺がx=0で発散しない様に入れた項)
変形して
(1+x^2)Tf=ax+b
Tf=A/(1+ix) +B /(1-ix) (A,Bは定数)
T^(-1) (1/(1-ax))=e^(ax)より
f=A e^(-ix) +B e ^(ix)
f=C_1 sinx+C_2 cosx (C_1,C_2は定数)

例題2:
f'-f=e^xを解け。

解:
両辺からTをかけ
(1/x-1)Tf=1/(1-x)+a/x
Tf=x/(1-x^2)+a/(1-x)
Tf=1/2 (1/(1-x)-1/(1+x) ) +a/(1-x)
f=1/2(e^x -e^(-x)) + a e^x

例題3:
f'=x+f+1を解け。
1/x Tf=x + Tf + 1 +a/x
(1-x)Tf=x^2+x +a
Tf=- x-2+A/(1-x)
f=-x-2 + e^x

解説:
詳しい人は気がついたと思いますが、
変換Tはフーリエラプラス変換と関係があります。

例えば、Tだと、 TDf=1/xTfだけど、
フーリエ変換FではF(Df)=-iωF(f)となっています。

フーリエ変換ラプラス変換常微分方程式を解くときも同じ手法を取りますが、発散に気を付けなくてはいけなかったり、超関数が出てきたり、逆変換が積分式だったりして、T変換よりややこしいですね。

課題:
T変換はどうしてフーリエ変換と似ているのか?
T変換を積分式で書けないか?
上と同じ質問であるがT(δ(x-a))は?
逆にTf=δ(x-a)の解は?
Tは線形変換であるが固有関数は?多分超関数で与えられると思う。

(あまり知られていない事実ですが、フーリエ変換の固有関数は量子力学調和振動子の固有関数と同じです。)